情報処理 期末考査(筆記) 以下の各問いすべてに解答せよ。 60分 20040730伊東 1 情報理論の示すところを大学における各位の日常的学習に役立てることを考えたい。 1−1 C. シャノンによる情報量の定義を数式を併用して示し、観測ならびに観測者 の役割について簡潔に説明せよ。 注:事象を確率的に明確に定義し、対数関数の底など にも留意すること。 1−2 書物やWeb-pageなど、ユーザが主体的に文字解読する必要があるメディアを「能 動的メディア」と呼ぶ。いま、はいぱーワークブックのような、情報機器をフルに活用し 、よく整備された電子教材があるとしよう。これを履修する学生集団が、  a テキストとしてweb公開されている記述(陳述)内容=教育コンテンツを 学習記憶  しない  b タイピングソフトなど、手続き的に学習されるべき トレーニング を 励行しない という二つの教育指導上の<問題現象>があるとし、諸君が担当教員の立場からこれを指 導することを考える。 問 1−1で導いた情報量の定義を用いて、a,bおのおののケースを情報過程として説明 し、能動的メディアを用いたメディア学習の状況を改善させるにはどうすればよいか、a, b,おのおのに対して考えられる学習不調の原因と、改善のための対案を付せ。 1−3 商用にソフトウェアは毎年のようにヴァージョンが変わる。個別アプリケーショ ンの使用法の説明だけでは、全学必修の教養科目としては成立しえない。だが、直前まで 高校生あるいは受験生であった諸君には、一過性操作性の知識と、一般性ある理論科学の 区別がつかないこともままある。このような状況を改善する上で、カリキュラムに どの ような工夫をすればよいと考えるか。自身の受講感想も参考としつつ、対案を簡潔に付せ 。 2 視聴覚メディアの情報認知について、半定量的に考察したい。10年前の私たちの社 会は「ポケットベル」を常用していた。5年前、携帯電話で電子メールをやり取りすると は思っていなかった。今日、携帯で写真静止画を送受信するのは当然と思われている。諸 君が大学を卒業する今から数年後の時点を念頭において、以下の問に答えてみよ。 註. “2”解答に空欄事項のある場合、或いは不真面目な解と認められる場合       単位の発給は行わず”#”の成績を発行するので注意のこと。 いま仮に α 目や耳の末梢からもたらされる要素刺激の知覚に要する遅延時間 〜 50 msec β 末梢刺激から、喜怒哀楽などの情動が喚起されるのに要する遅延時間 〜 50 msec γ 視聴覚に提示された内容の意味を客観的に意識するのに要する遅延時間 〜500 msec (msec=ミリ秒)程度である、という平均的結果が、教室での測定で得られたとしよう。 2−1 上記 α や β が γに比べて著しく速いというヒトの生理的事実がもつ  a 利点 と b 注意が必要と思われる点 について、気がつくことを記せ。 2−2 テレビやラジオなど音声動画を用いる情報メディアを「受動的メディア」と呼ぶ ことがある。 古くはナチスドイツがら、90年代、ルワンダなどの内戦やオウム真理教事件、昨今のメデ ィア劇場型戦争など、私たちの社会には映画、ラジオ、テレビ、ヴィデオ、インターネッ トほか視聴覚メディアを活用したマインドコントロールや情扇、アジテーションが頻見さ れる。 諸君も日常的に「自爆テロ」として報道されるイラク民兵の「特攻」や、「人質 軟禁、イラク人開放要求」などの音声動画報道に接していると思う。 問 2−1の知見から受動的メディアに於いて情報の受け手がこれら情扇に対する客観的 批判力(「情報リテラシー能力」という:TVなど受動メディアには古典的な意味での文盲 Illiteracyがなく、全人口に直接アピールすることに注意)を持つために、何に気をつけ ねばならないか。簡潔に記してみよ。 2−3 21世紀に入りネットワークのブロードバンド化やユビキタス化、視聴覚メディア 情報化が急速に進展している。本コースは全学より一足早く00年から教官が使用する教材 のAV化を推進、04年からはあらゆる学生が視聴覚情報の発信側に回ってヴィデオクリップ に出演および収録を経験、事後に文理の別ならびに時間の制約を超え収録物を基盤センタ ーのVideo-On-Demandサーバー rtsp://stream.ecc.u-tokyo.ac.jp/utv/を通じてメディ ア相互評価的に扱う実習を取り入れた。(互評相手のPresentationを視聴できる。東京大 学内からのみパスワード付で閲覧可能:黒板を参照)。 註. レポートの採点基準項目にも追加がある。黒板を参照のこと。 問 2−2で視聴覚情報の受け手としてのリテラシーを問うた。2−3では各自が視聴覚 情報の発信者の観点から受動的メディアで情報発信する a 利点と b 必然的に問われ る倫理的審級 criteria (倫理的に問われるべき条件)について、各々気がつくところ を列挙せよ。 3 有限の期間、有限の手段により、各自の創意工夫に端を発しながらプロフェッショナ ルとして大学や社会の一線で通用する、オリジナルで高いクオリティを持つ論文/報告書 〜レポートを安定作成できるようになることを考えたい。 3−1 各自が設定した「自作問題による卒業論文型レポート」について、 Aテーマを記し、また、ジャンル分けを試みて「情報と___」という形で解答欄に記せ 。 B その研究について、講義で触れた以下の諸項目 先行実績の参照    1−1   大前提   1−2  中実績 1−3  小問題 設定   研究本体        {2−1   仮説   2−2  検証 2−3  考 察}  のループ群(予定)   後続研究への展望   3−1   小結論   3−2  中期展望 3−3   大予想 を、現時点で記述できる範囲において簡潔に記してみよ。 3−2 3−1の結果を生かし「研究の概要abstract」を記せ(日本語あるいは英語も可 )。 3−3 研究遂行の具体的手順とスケジュール(アカデミック・カレンダー)を記してみ よ。   (注:作成進行管理能力はジェネラリスト業務でもっとも重要とされるひとつ である。)